中国当局のスパイ取り締まり権限を明確化した改正反スパイ法の施行から1日で1年。取り締まりを担う国家安全省は施行後、SNSで多くの事例を紹介しつつ「社会全体の動員が必要だ」と市民に通報を呼びかけてきた。1日にはスマートフォンなどの電子機器の検査に関する新規定も施行され、中国に関わる外国人の間に不安感が漂っている。

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 中国で誰もが利用するSNS微信(ウィーチャット)で5月、国家安全省の公式アカウントが投稿した「警告」が注目を集めた。

 「外国との学術交流で国家級湿地保護区や林の生態環境を調べた」「国外の非政府組織(NGO)の支援のもと、自然保護区内の各種データを窃取した」

 こうした事例を挙げ、地理や気象、生物に関連するデータを許可なしに集めて外国と共有する行為は「国家安全と利益を危険にさらす」と主張した。さらに「生態資源データの安全は国民一人ひとりが義務と責任を負う」と述べ、疑わしい事例を見たら当局に通報するよう呼びかけた。

 生態研究のような自然科学分野でも、外国と共同研究をすればスパイ行為と判断されるともとれる内容だ。軍事や政治のような分野ではすでに学術交流の萎縮が指摘されてきたが、さらに広い分野で交流が細る懸念が出てきた。

 アカウントはこの1年弱で、「ネット通販の有力アナウンサーが外国コンサルタント会社から業界内のネガティブ情報を探られた」「軍民両用空港で滑走路周辺を撮影した」といった事例紹介や解説など計250本あまりの記事を配信した。刑事ドラマ風の動画や漫画なども活用。中国に「悪意」をもつ外国企業や外国人が登場し、自然と警戒感を抱かせるような内容が目立つ。

 こうして市民に「監視」が奨励されるなか、ビジネスのため中国を訪れる外国企業関係者らは不安を抱える。

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