皇室メンバーをこのまま人権のない状況に縛りつけ続けてよいのか――。今から約20年前、そう訴えて大胆な改革を提言した社会学者がいた。東京工業大学名誉教授の橋爪大三郎さんだ。日本国民が象徴天皇制に幕を引き、共和制に移行するとの構想だった。皇位継承のあり方をめぐる議論が停滞する中で、目を背けられている問題とは何か。「世襲制を採用するということは、そもそも断絶を覚悟することなのだ」と説く橋爪さんに聞いた。
「議論の骨格が外れてないか」
――皇室や皇位継承のあり方をめぐる今の議論状況をどう見ていますか。
「いろいろな考えが語られていますが、ピンと来るものが一つもありません。議論の骨格が外れているのではないでしょうか」
――女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つよう変えたらどうかとか、議論はいくつか進んでいます。骨格が外れているとはどういうことでしょう。
「まず、皇位継承や皇室のあり方に関する判断は、そもそも誰がすべきものなのか、です。『政府の取り組みが遅い』との批判が当たり前のように語られていますが、妥当でしょうか」
「日本国憲法は、皇位は世襲だと定める一方、それ以外の具体的な皇室のあり方は皇室典範という法律で決めると規定しています。法律を改廃するのは国会ですから、建て付け上、この問題の最終判断をするのは国会であり、国会に代表を送っている国民なのです」
――政府ではない、ということですか。
「政府は何を」が映す当事者意識の欠如
「行政府が意見を持つことはありえますが、それは最終判断にはならないということです。つまり、国民が判断しなければ、この問題は解決できない。『政府は何をしているのだ』と考える人もいるでしょうが、当事者意識の欠如であり、主権者にふさわしくない姿勢です」
――骨格が外れていると感じさせられる、それ以外の点とは?
「世襲という問題が直視されていないことです。そもそも世襲という仕組みを採用するということは、断絶する可能性を引き受けるということです。断絶を覚悟し、もし断絶した場合どうするかも考えておかねばならない。世界史を見ても、王朝は断絶を迎える方が普通です。実際、日本は今その危機に直面していて、次世代の皇位継承資格者は悠仁(ひさひと)さましかいません。もし結婚しなかったり男のお子さまが生まれなかったりすれば、そこで終わりです」
万一の場合どうする? 三つの選択肢
「日本の場合は、皇位が非常…