自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入の一部を裏金化したとされる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで告発され、東京地検が不起訴にした同派の世耕弘成氏=自民を離党=と萩生田光一氏について、東京第五検察審査会は、両氏の不起訴を「相当」と議決した。
ただ、世耕氏の政治団体会計責任者の不起訴は「不当」と判断し、刑事責任を負うべきだとして処分内容の再検討を検察に求めた。いずれも議決は10月9日付。審査を申し立てていた大学教授が明らかにした。
世耕氏と萩生田氏の不起訴処分は「相当」
世耕、萩生田両氏は2018~22年の5年間で、自身が代表を務める政治団体の収支報告書に、世耕氏は1542万円の収入を、萩生田氏は2728万円の収入を記載していなかったなどとして大学教授から今年3月に告発された。特捜部はいずれも証拠が足りない「嫌疑不十分」で5月に不起訴にしたが、大学教授は不服として検察審査会に審査を申し立てていた。
検審の議決は、世耕、萩生田両氏について「不起訴処分を覆すに足りる事由がない」と判断した。
一方、世耕氏の会計責任者については、安倍派の裏金作りを「組織的な犯行」としたうえで、1542万円の不記載額は「一般市民の感覚からすれば極めて高額で、会計責任者として刑事責任を負うべきだ」と述べた。
特捜部は一連の裏金事件で、安倍派や「志帥会」(二階派)、「宏池政策研究会」(岸田派)の国会議員や秘書ら計11人を立件した。立件されなかった議員や会計責任者の秘書らは順次告発され、不起訴になった議員らは、不服申し立てを受け検察審査会が審査している。
検察審査会は市民11人で構成され、不起訴処分の妥当性について捜査資料などを踏まえて判断する。「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」の3種類の議決のうち「起訴相当」の場合、検察が再捜査のうえで再び不起訴としても、2度目の審査で「起訴すべきだ」との議決が出れば強制的に起訴される。