セザンヌ作品(中央)と並ぶ松浦寿夫の絵画
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 1959年に誕生し、ル・コルビュジエ設計の本館は世界遺産の国立西洋美術館(西美)。そこに初めて現代美術家たちを大々的に招き入れる――。こんなやや大仰ともいえる触れ込みの今展だが、所蔵品と現代作品を並べたり、現代作家が所蔵品を解釈したり、という試みは他の美術館では今や珍しくない。こうした指摘を意識したわけではないだろうが、他館にはない多様な切り口を見せている。

 西美は、日本の画家に本物の西洋美術を見せたいという意図もあった松方幸次郎のコレクションを母体にしている。それゆえ、同館が現代の美術家を刺激してきたかを問う意図がある。同館の「セザンヌ展」に示唆を得たという松浦寿夫の絵画とセザンヌ作品を並べたあたりは、素直な展示といえる。

 彫刻家の小田原のどかがロダンの「考える人」を横倒しにした(写真上)のは、地震大国にある美術館のありようを視覚化すると同時に、この多文化主義の時代に、なぜ極東の島国に西洋美術専門の美術館が存在するのかも考えさせる。写真家の鷹野隆大が、男性の裸体を捉えた自作写真と女性の裸体を描いたクールベの絵画を並べて展示した(同下)のも、男性作家中心の所蔵品や男性中心の美術史を分かりやすくあぶり出す。

 さらに、美術館の空間を検証…

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