世界自然遺産の北海道の知床岬で進む携帯電話基地局の整備計画について、環境保護団体や研究者らが9日、東京都内で会見を開き、国や地元自治体に計画の見直しを求めた。計画の進め方や生物への影響調査にずさんな点があると指摘した。

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会見で知床岬での携帯基地局の整備計画の問題点を指摘する環境保護団体や研究者ら=2024年8月9日、東京都千代田区の日本プレスセンター、市野塊撮影

 この計画は、2022年に知床沖で発生した観光船沈没事故を受け、地元の斜里町と羅臼町、北海道、総務省、環境省などが携帯電話の不感地域をなくす目的で進めてきた。

 今年、知床岬に基地局の電源確保のために太陽光パネルやケーブルを設置する工事を始める予定だったが、国の天然記念物オジロワシへの影響調査が不十分なことが判明。影響を調べるために工事は一時中断している。地元自治体も斜里町は見直し、羅臼町は推進と意見が割れたままだ。

 会見では、鳥類の専門家である白木彩子・東京農業大准教授は、基地局の計画が、オジロワシを含む多様な希少鳥類の繁殖や生息に影響を与えかねないと指摘。知床周辺の鳥類相が明らかではないとし、渡り期を含む通年の調査などが必要だとした。

 また、日本自然保護協会の大野正人さんは、不感地域の解消が目的ならば、基地局ではなく、衛星電話や衛星通信サービス「スターリンク」の活用も検討すべきだと提案。拙速な工事計画を見過ごせば、「全国の国立公園にも波及するおそれがある」と訴えた。(市野塊)

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