「世界最高峰」と評されるサクソフォンだけのプロ楽団「ミ・ベモル サクソフォンアンサンブル」が、兵庫県西宮市の14公民館を回るコンサートツアーを続けている。世界的な楽団と西宮を結びつけたのは、コロナ禍がもたらした縁だった。
ミ・ベモルは1989年結成。6種類のサクソフォンのみによる編成で、現在メンバーは22人。大阪を拠点に、米ニューヨーク・カーネギーホールをはじめ国内外で公演を重ね、2006年にスロベニアで開かれた世界サクソフォン会議では「今日ある世界の最高峰」と絶賛された。
その輝かしい歩みも、コロナ禍では止めざるを得なかった。
21年4月、国内での看板公演のひとつが中止に。会場がワクチン接種会場になったためだった。次第に練習場所の確保も難しくなり、思うように活動できない日々が続いた。
ミ・ベモルの前田昌宏代表(71)は「アンサンブルは人が集まってつくりあげるもの。あのころは本当にお手上げでした」と振り返る。
公演中止を伝え聞いた西宮市文化振興財団の田口正夫係長(46)は、「ダメ元で」西宮市での公演を打診した。「演奏を初めて聴いたとき、自然と涙があふれた。西宮の人たちにもぜひ聴いてほしいと思った」
ミ・ベモル側も快諾。前田さんは「演奏の質を維持するには発表の場が必要。声をかけてもらえて、ありがたかった」。
だが公演日程が決まった後、県内に緊急事態宣言が出され、公演はまたも中止に。
それでも諦めなかった。翌2…