東洋大姫路の阪下漣

 マウンドから打者を見下ろすように、堂々とした投げっぷりが際立つ。

 1年秋からエースナンバーを背負う東洋大姫路の阪下漣(2年)は「最初は緊張感に押しつぶされそうになったけど、今は期待に応えるぞって思っています」。

 小学6年だった2019年夏、甲子園球場で全国選手権大会決勝を観戦した。当時、岡田龍生監督がいた履正社(大阪)の一塁側ベンチ上の客席から、初優勝のシーンを脳裏に焼き付けた。

 「投手がしっかりと試合をつくるところに一番にひかれた」。22年4月に岡田監督が母校・東洋大姫路の監督に就任すると、翌年、阪下は追うように入学した。

 監督の指導の下、体重を20キロ近く増やした。現在、身長181センチ、体重87キロ。安定した下半身から最速147キロの直球を投じるまでになった。

 ただ、やみくもに球速を求めてはいない。「どれだけ速くても、ボールになったら意味がない」

 練習では、多く投げて35球ほど。「投げ込みはしない。少ない球数で集中して投げることを常に心がけている」。目指すのは「コントロールは日本一」の称号だ。

 右腕が世代屈指の投手へと成長するとともに、ここ10年で22年春の1度しか甲子園に出られていない伝統校は再び強豪への階段を駆け上がっている。

 今夏の全国選手権兵庫大会で11年ぶりの4強入りを果たすと、今秋は県大会、そして近畿大会を17年ぶりに制した。

 各地区の王者が競う明治神宮大会では準決勝で横浜に敗れたが、エース右腕は十回まで1失点に抑えるなど、11回を10奪三振3失点で投げきる気迫を見せた。

 大会を通じて打者としても2本の適時打を放った。中学時代のチームでは4番を打っていたが、打撃は「好きではない」という。

 「投球は、自分の投げたいように投げられるので楽しい」

 無邪気に笑う背番号1が今度は甲子園のマウンドに立ち、見る人を魅了する。

共有
Exit mobile version