ゆうちょ銀行は17日から、詐欺に使われた可能性の高い口座の情報をいち早く警察へ提供する取り組みを始めた。金融機関が全国の警察と口座情報の提供で連携するのは初めて。
背景には、SNS型投資詐欺とロマンス詐欺の被害の深刻化がある。昨年1~11月の認知件数(暫定値)はあわせて9265件で、前年同期の2.8倍にのぼった。被害額も3倍の計約1141億円だった。
国内の金融機関は短期間に多額の現金が頻繁に口座に出し入れされた場合など、金融庁に「疑わしい取引」を届け出る。ただ、銀行が取引内容を調査して届け出て、金融庁を経由して警察へ情報提供されるまでに1カ月以上かかる場合もある。
ゆうちょ銀行と警察庁は17日に情報提供の協定を締結。ゆうちょ銀行は独自の分析で疑わしい取引のなかでも詐欺の可能性が高いものについて、検知の翌営業日には警察庁や都道府県警に知らせる。警察は口座情報から現金の流れを突き止めて摘発へつなげる。
疑わしい取引42.4%増
警察庁によると、被害が急増するSNS型投資詐欺やロマンス詐欺は、SNSで知り合った相手から数カ月間にわたり現金などをだまし取られ続ける事例が多い。警察がいち早く口座情報の提供を受けることで、被害を途中で食い止められる可能性も高まるという。
ゆうちょ銀行は国内最多の約2万4千店舗、約1億2千万口座をもつ。犯罪に利用された口座情報については、金融機関の間で情報を共有する仕組み作りが進む。全国銀行協会は昨年12月、共有に向けた検討会を設置。今年3月を目処に共有する内容などを報告書としてまとめる。
金融機関からの疑わしい取引の届け出は2023年に52万2649件あり、19年から42.4%増えた。警察庁は「他の金融機関にも、ゆうちょ銀行と同じ取り組みを広げたい」と期待する。