赤坂御苑を上皇さまと散策する上皇后美智子さま=2024年10月、東京・元赤坂の赤坂御苑、宮内庁提供

 上皇后美智子さまが昭和から平成の終わりにかけて詠んだ466首を収めた歌集「ゆふすげ」(岩波書店)が15日、出版される。いずれも未発表の作品で、歌集では初めて「美智子」と著者名が記された。家族を慈しみ、自然を見つめ、被災地に思いを寄せる。三十一文字に刻まれた歌から、ひとりの歌人としての率直な思いが伝わる。

 〈まなこ閉(と)ざしひたすら楽したのし君のリンゴ食(は)みいます音(おと)を聞きつつ〉(1976年)

 皇太子時代の上皇さまとのひとときを、のびやかにうたった一首だ。「言葉がゆったりと流れていて、窮屈なところがない。立場からものを見ないで、自分の言葉で表現することに長(た)けている」。歌集に解説を寄せた、歌人で朝日歌壇選者の永田和宏さんは、美智子さまの歌をこう評する。

 小学生の頃から歌に親しみ、皇太子妃時代は五島美代子、佐藤佐太郎らに師事した美智子さまは、優れた詠み手として知られる。宮内庁御用掛として歌作りの相談にも乗る永田さんは、68年以降の未発表作品があると聞き、一冊にまとめることを勧めた。美智子さま単独の歌集としては、「皇后陛下御歌集」として編まれた97年刊の「瀬音(せおと)」に続く第2歌集となる。

 結婚した59年以降の歌を収めた「瀬音」と創作時期は一部重なるが、「まず公としての顔があった『瀬音』に比べ、よりひとりの人間としての思いが強く出ている歌集となった」と永田さんはみる。

 たとえば皇后時代、天皇陛下…

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