JR三鷹駅(東京都三鷹市)に近い跨線橋(こせんきょう)を舞台にした映画が24日から上映される。一昨年末から解体が始まった橋と、ある家族のつながりを描いた物語だ。
「橋と眠る~消えゆく三鷹跨線橋を惜しんで~」は、橋の近くに住む俳優の神山てんがいさんが制作した。夕涼みをしたり、散歩をしたりしていた大好きな場所。地域に愛された橋がなくなると聞き、思い出を映画で残したいと考えた。
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主人公は舞台装置を作る工場で働く45歳の男性、今橋渡(いまはしわたる)。病で余命がわずかと宣告されるなか、街にある橋の解体と、家族4人の人生が交錯する。
漫画家の故かざま鋭二さんも協力
2022年6月から9カ月間にわたり、橋や地域のバーなどでロケをした。舞台俳優として20代から活動してきた神山さんにとって、初の映画監督作品で、主演も務めた。俳優仲間ら37人も出演し、70分の作品が出来上がった。漫画家のかざま鋭二さん(22年10月死去)はロケ場の提供やタイトルのデザインで協力してくれた。昨年末に開いた試写会では好評を博した。
神山さんは橋の解体が進むのを見て、「これで本当にさようならと思うと切なく寂しい」。映画のなかで橋は人と人をつなぐ象徴、そしてあの世とこの世を分ける境界という意味も込めた。「100年近く色々な人生を見てきた橋は、古くて情緒があり、色っぽい風情がある。こんな素敵な橋があったと知ってほしい。橋へのオマージュです」と話す。
太宰治も愛した場所だった
三鷹跨線橋は1929年に建設され、作家・太宰治がよく訪れた場所として知られる。耐震不足のため、JR東日本が三鷹市に無償譲渡を打診したが実現せず、解体が進んでいる。
上映はMorc阿佐ケ谷(杉並区阿佐谷北)で午後7時半から。30日までで、一般1500円・60歳以上と学生は1300円。問い合わせは同劇場(03・5327・3725)へ 。他の地域での上映展開も検討中だ。