空き家の物件情報を提供する三重県伊賀市の「空き家バンク」で、バーチャルリアリティー(VR、仮想現実)技術を使った「バーチャル内覧」が好評だ。遠隔地の人も、現地に訪れることなく、物件情報を細かく確認できる。県内自治体での導入は珍しく、同市は利用をアピールしている。
同市は2016年度に空き家バンクを開始。不動産や法務、建築などの団体と包括連携協定を結び、手厚いサポート態勢を組んだ。新型コロナ禍もあり、21年度に市職員が3Dカメラで撮影するバーチャル内覧を導入した。
画面上の間取り図に表示された○印をクリックすると、部屋や台所、トイレ、風呂などの天井から床までを360度見ることができる。部屋の種類や大きさもテロップで示している。合わせてユーチューブ動画も取り入れた。
市空き家対策室によると、写真や間取り図だけしか掲載のなかった以前は、現場を見ても「イメージと違う」との声があったが、バーチャル内覧導入後はなくなったという。バンクの登録者はほとんどが市外。担当者は「バーチャル内覧を済ませると、あとは現地までの道筋や近隣の状況を確認する程度になるが、それについては移住コンシェルジュとやりとりしてもらえばわかる」と話す。
3月、沖縄県石垣市の家族が伊賀市で民泊事業を始めようと引っ越しした。沖縄からはバンク利用による初の移住で、選んだ理由として伊賀市が大都市に近いことのほか、バーチャル内覧で物件の詳細がわかったことを挙げているという。
バンクの登録者数は延べ約1800人、成約物件は215件。バーチャル内覧導入後はいずれの数字も右肩上がりだという。(小西孝司)