3月にパリで開かれたコムデギャルソン24年秋冬コレクションのショー=長谷川陽子撮影

 パリ・ファッションウィーク6日目。ショーの舞台裏でコムデギャルソンのデザイナー川久保玲が口にした言葉が忘れられない。「何も思うようにできないし、つくれない」。自分に対して怒りを感じると川久保は言った。

 1980年代、穴の開いた無彩色の服で西洋のエレガンスに真っ向から挑み「黒の衝撃」と称された。81歳の現役デザイナーとして40年以上パリで発表を続け、2023年には文化功労者にも選ばれた。世界中のファッション関係者から尊敬とあこがれのまなざしを向けられる。そんな存在になってもなお、自分の仕事に満足していない。

 今季のファッションウィークが幕を閉じたあと、イタリアの老舗ブランド、ヴァレンティノに25年在籍したデザイナー、ピエールパオロ・ピッチョーリが退任を発表した。ピッチョーリも以前インタビューしたとき、こう言っていた。

 「完璧を求めているけどそう…

共有
Exit mobile version