オクローシカを手にするステッツク・アナスタシアさん(左)とダイアナさん=2024年8月6日午後0時49分、千葉市、マハール有仁州撮影

 千葉市中央区の「マトリョーシカ」は昨年、ロシア料理店としての5年の歴史に幕を下ろした。店主だったステッツク・アナスタシアさん(43)は、シベリア東部のハバロフスク出身。一口すすればロシアと千葉の日々や語らいを思い出せる一品がある。ヨーグルト風味の冷製スープ「オクローシカ」だ。

 小学生のころ、3カ月の長い夏休みがあった。マイナス20度を下回る長い冬を越えると、短い夏がやってくる。家族や親族と郊外の農園付きのロシア風別荘「ダーチャ」に集まった。ダーチャでは豚や鶏を飼い、野菜を育てた。

 足りなければ、配給切符をちぎって街に出た。商店の長い列を弟と交代で何時間も並び、無表情な店員に配給品と交換してもらった。材料をそろえて完成させたオクローシカは、暑さを吹き飛ばしてくれた。祖父の出身地のウクライナ方式の赤カブを入れた冷製スープを食べたのも思い出だ。

「自分の国を恥じろ」「日本から出て行け」

 ペレストロイカ後のロシアでは日本車の人気が高まり、自動車貿易の仕事に就いた。2カ国を行き来するうちに移住を考えた。小学校に入る前だった娘のダイアナさん(23)と離れたくなくて、一緒に日本に移った。

 マトリョーシカを開いた後は…

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