@ブエノスアイレス
モスクワから約1万3千キロ離れた南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに、ロシア人でにぎわう店がある。ウクライナ侵攻までは普通の食品店だったが、侵攻後に反政権派への弾圧や動員を逃れた人々が増え、ロシア料理に欠かせないサワークリームやミニぎょうざなどの食品の販売を始めたからだ。
店主のセルゲイさん(62)は、そんな人々の「先輩」だ。息子が徴兵対象の18歳になる前年の2000年、ロシアを離れて家族で移住した。チェチェン紛争で多くの若者が戦死していた。外資系企業の勤め先などすべてを捨てたが、悔いはないという。「息子の命が最も大切だった」
特派員メモ
世界各地で日々ニュースを追っている朝日新聞記者が取材や暮らしの中で感じたことをつづった「特派員メモ」。トランプ前米大統領の返り咲きなど、大きな国際ニュースが相次いだ2024年を振り返ったコラムを年末にまとめて配信します。長年紙面でご愛読いただいているコラムをお読みください。
アルゼンチンは移民の国で差別や偏見が少ないと感じる。ロシア人はビザ無しで入国でき、国籍取得も容易だ。セルゲイさんは野菜販売で地道に資金をため、4年前に自らの店を持った。商品のソーセージはウクライナ人の移民がつくり、乳製品などはアルゼンチン人が生産している。「我々は分断されず、互いに助け合っている」と話す。
ロシアは強国だが、常に戦争…