写真・図版
佐渡金銀山の象徴でもある露天掘り跡「道遊の割戸」=2024年6月5日、新潟県佐渡市、北沢祐生撮影

 今年は1924年に国際連盟が国際知的協力機関(国際連合教育科学文化機関〈ユネスコ〉の前身)の設立を決めてから100年にあたります。教育や科学、文化面の協力を通じ、世界の平和に貢献してきたユネスコが今、様々な課題に直面しています。ユネスコ日本政府代表部の加納雄大・大使は「ポスト冷戦時代の終わりが、ユネスコの果たす役割にも影響を与えている」と語ります。

 ――ユネスコには米国もパレスチナも加盟しています。

 パレスチナは2011年、ユネスコに加盟しました。これに反発した米国とイスラエルが脱退しましたが、米国は昨年夏に復帰しています。パレスチナ自治区ガザでの人道危機には、ユネスコも子供のメンタルヘルスケア支援や文化財保護に取り組んでいます。

 ユネスコには、コンセンサスによる意思決定を重視し、各国の立場が対立する問題でもギリギリまで妥協を模索する伝統があります。

 今年3月のユネスコ執行委員会で採択されたガザ情勢に関する決議でも、米国、パレスチナ、アラブ諸国が水面下で調整を続け、最終的に米国は、自ら参加しませんでしたが、コンセンサスには反対しませんでした。

 ――ウクライナ情勢を巡るユネスコの取り組みはどうでしょうか。

 教育や文化財保護、ジャーナリストの安全など、軍事・経済支援とは異なる、独自の支援を行っています。ただ、ロシアを厳しく批判する欧米諸国や日本と、「ロシアを非難しながら、イスラエルを支援するのはダブルスタンダード(二重基準)だ」と考えるグローバルサウス諸国との間で温度差があります。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ260人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

■「戦争は人の心に生まれる」…

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