夫の梶山正さんと一緒に自宅の庭で過ごすベニシア・スタンリー・スミスさん(右)=2019年

ベニシア・スタンリー・スミスさん、逝ってから1年

 なあ、ベニシア、何の種をまいたらいいだろう。これから、僕はどんな庭を造ればいいんだろう――。

 2023年6月21日。夏至の日の朝、ハーブ研究家のベニシア・スタンリー・スミスさんが逝った。72歳だった。あの日から、もうすぐ1年が経つ。

 清流が流れる山あいの集落、京都・大原の里。築100年以上の古民家の庭をベニシアさんは愛していた。

 今、その庭に一人、夫で山岳写真家の梶山正さん(64)がいる。亡き、妻の面影を探しながら。

ベニシアさんと暮らした家の前で話す梶山正さん=2024年6月3日午前、京都市左京区、新井義顕撮影

 6月は庭の梅やサンショウが実をつけ、ツクシイバラがいっせいに花を咲かせる。かつては、紫やピンクのジギタリスが庭を彩り、玄関先のたくさんのラベンダーが風に揺れていた。

 多い時は100種類ものハーブや季節の花であふれていた庭は今、雑草が目立つようになった。目が不自由になった晩年の妻が庭に降りられるようにと作った手すりが、庭先に真新しく残る。

梶山正さんが手作りした玄関前の手すりをつたって歩くベニシアさん。梶山さんが撮影した=梶山正、ベニシア・スタンリー・スミス著「ベニシアと正3 京都大原・二人の愛と夢の記録」から

ハーブ取り入れたライフスタイル、全国にファン

 ちょうど庭がみえる和室にある祭壇も手作りした。妻の写真と、ファンが持ってきてくれた小さなヒマワリのドライフラワーが飾られている。テレビ番組や著書で庭造りやハーブを取り入れたライフスタイルが注目された妻には、全国にファンがいた。

 位牌(いはい)には「梶山ベニシア」と刻んだ。まだ納骨できずにいる遺骨が入った骨つぼと写真に触れながら、毎朝と毎晩声をかける。

生前は気恥ずかしかった言葉を

 ベニシア、グッドモーニング…

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