ブレア元英首相=2024年9月3日、ロンドン、ニューヨーク・タイムズ

Tony Blair’s Advice to Rookie Leaders: Tend to Your Legacy Before It’s Too Late

 ブレア元英首相が『リーダーシップについて』[On Leadership]という新著を出した。1997年にダウニング街10番地(訳注:英首相官邸を指す)に入ったとき、教えてもらっていたらなあ、というあらゆるヒントを書いた本だという。

 時期が時期だけに、スターマー新首相のためのユーザーガイドだと考えたくなる。ブレア氏以来となる、総選挙を勝ち抜いた労働党政権の首相だ。

 だがブレア氏は、この本はスターマー氏に向けたものでは「絶対にない」、同氏に助言しているわけでは「本当にない」、と強調した。スターマー氏が選挙準備をしていた昨年、2人は一緒にステージに立っていたのだが。世界的な選挙イヤーの2024年、ブレア氏は耳を傾けてくれる「新人リーダー」[rookie leader]なら誰に対してでも、教訓を伝えようとしている。地政学的な変動について、台頭するポピュリズムについて、政治的に不安定な米国との付き合い方について、などだ。

 「米国政治は、ある意味でひどく分裂し、一定程度の機能不全に陥っていると言わざるをえない」とブレア氏はインタビューで語った。「しかし、私の考えでは、それはほかならぬ米国が世界最強の国として再登場するのと同時に起きている」

 現在71歳のブレア氏は、愛想がよく、つかの間守りに入ることはあったが、気さくに話した。なるほど、ダウニング街を去って17年経った今も存在感を保ち、ちょっとした謎でもあり続けるわけだ。

 ブレア氏は、教育改革や公的医療サービスの拡充といった、首相在任中に実現した功績を誇らしげに語った。首相退任後は「もうかる道」[lucrative post-government career]を歩んでおり、金融機関や中東外交のアドバイザー、立ち上げたコンサルティング事業などを通じて、各国の独裁者や億万長者と節操なく付き合っているとの批判を浴びてきた。この件についてブレア氏は、サウジアラビアとの関係は妥当だと防戦し、AI(人工知能)が政府にもたらす変容の可能性を称賛した。そして、彼が発明をたたえているイーロン・マスク氏の話題になると、口をつぐんだ。

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