南米を訪問している岸田文雄首相は4日、ブラジルの最大都市サンパウロで、在住の被爆者らと面会した。ブラジルには戦後、多くの被爆者が移り住んでいる。広島県出身の被爆者らは、広島選出の岸田氏に核廃絶への思いを伝えた。

【連載】地球の反対側のにほんご

日本語を公用語とするのは、この広い世界で日本だけ。でも日本語には、その根底にある「哲学」も背負い、世界に伝わった言葉があります。地球の反対側ブラジルを中心に、にほんごの現場から報告します。

 岸田氏は4日午後、日系社会の代表的な団体「ブラジル日本文化福祉協会」で演説。その後、2020年末に解散した「ブラジル被爆者平和協会」の元会長である森田隆さん(100)らと5分ほど面会した。

 森田さんは広島県砂谷(さごたに)村(現・広島市佐伯区)出身。爆心地から1・3キロの場所で吹き飛ばされ、首や後頭部に大やけどを負った。1956年にサンパウロに移住。差別や偏見を恐れ、ブラジルでは被爆者であることを明かさずに暮らした。だが84年、30人近い被爆者で協会を設立し、日本の被爆者には配られていた健康管理手当の支給を目指して、先頭に立ち日本政府と交渉した。

 森田さんは2017年、これまでの歩みを記した自伝をポルトガル語で出版した。面会で岸田氏に本を手渡すと「必ず読む」との返事があったという。森田さんの娘の斉藤綏子(やすこ)さん(76)は「父は岸田氏にずっと会いたがっていた。核廃絶を進めてくれることを、地球の反対側から願っている」と話した。

 岸田氏と面会した渡辺淳子さ…

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