
ブタの臓器を移植する「異種移植」をめぐり、米国の製薬企業が世界で初めて、米規制当局から正式な臨床試験(治験)の実施を認められたと発表した。2025年内にも開始するという。米国では昨年までに5人の患者への移植例があるが、あくまで「緊急措置」とされていた。治験の許可によって、異種移植の実現への歩みが、また一歩進むことになる。
「治験開始申請(IND申請)が認められたことは、移植できる臓器の利用可能性を大きくするという私たちの過酷なミッションにおいて、重要な前進だ」
米製薬企業ユナイテッドセラピューティクス(UT)社は2月3日、規制当局の米食品医薬品局(FDA)に、遺伝子改変ブタの腎臓を患者に移植する治験の実施が認められたと発表した。
発表によると、対象者は55~70歳の末期腎不全の患者。医学的理由で通常の腎移植ができないか、通常の腎移植の対象でも5年以内に亡くなったり、移植できないままとなったりする見込みが高い人、という条件がある。
米国の2施設で、まずは6人の患者にブタの腎臓を移植し、安全性と有効性を調べる。その結果が有望ならば、さらに最大で50人まで、治験の規模を大きくする計画だという。最初の移植は「2025年半ば」にも実施されるとしている。治験がどの施設で行われるかは公表されていない。
米国腎臓財団はX(旧ツイッター)で「この研究は、腎臓移植を必要とする人々にとってのブレークスルー(飛躍的な進展)になるかもしれない」と投稿した。
「研究段階」から「治療法」へ
正式な治験の許可には大きな意味がある。
米国では22~24年に、2…