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元タレントの中居正広さんが起こした女性とのトラブルへのフジテレビの対応が問題視されている中、フジの夕方の報道番組「Live News イット!」では、社員向けの説明会を速報したり、10時間に及んだ記者会見を中継し続けたり、と積極的な報道を続けている。自社の問題を伝える放送は、現場の社員によるフジ上層部への「抵抗」なのか。放送の裏側や、報道現場の思いを、番組のチーフプロデューサー(CP)を務める渡辺貴さん(50)に聞いた。
――中居さんが起こした女性とのトラブルは、昨年12月19日発売の「女性セブン」や同26日発売の「週刊文春」により、明るみに出ました。トラブルには、フジ社員の関与があったと報道されました。その後、フジ社員が自社の女性アナウンサーをタレントと2人きりにして性的接触をさせることが常習化していると報じられるなど問題は拡大。フジのガバナンスが問われる事態になりました。番組として時間を割くようになった理由は。
年始はまだ、社内の危機感はそれほどではなかったと思います。文春の続報が出てくる中で、社内でも動揺が広がりました。僕も女性アナウンサーを誘っての社外の人との会食はありますが、文春が報じたような(タレントとの性的接触といった)ことについては、そんなのあるの?と、驚きました。ただ、自社が当事者で、情報もなく、番組でやりようがなかった。
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やはり、温度感が変わったのは、1月17日の1度目の会見からだと思います。会見を見て、「これは、だめだな」とみんなが感じたと思います。
――1度目の会見は、定例会見の前倒しという形で行われました。テレビ局はオブザーバー参加で、質問できず、映像の撮影も許されない「クローズド」な形式でした。会見では、港浩一社長(当時)らが、「調査に関わることになるので回答を控える」を連発。調査委員会のあり方について、日本弁護士連合会のガイドラインに基づく第三者委員会だと明言しなかったことでも、批判を集めました。さらに、発生からほどない2023年6月初旬にフジがトラブルを把握していたにもかかわらず、スポンサーに説明などをせずに中居さんの番組起用を続けていたことも明らかになりました。
会見のあり方について、フジ内部では、ギリギリまで交渉する動きもありました。しかし、僕自身は、社長まわりが決めたなら、そうするしかないのかな、と思ってしまった。今振り返れば、あの時、イットのCPとして、会見のあり方について何か言えたのではと思う。悔しいし、反省しています。
――1度目の会見は情報が解禁された午後4時45分頃から、内容を速報しました。報じるにあたり考えていたことは。
フジでやっている会見なのに、他局に早く、詳しく報じられたら恥ずかしいということが頭にあった。どこよりも詳しく長く、しっかりやるべきだという方針でした。
ただ、当時は会見の内容を批判的な目線で描くことはできなかった。「番組で批判するのは恥ずかしいことなのでは」と思ったんです。
――とはいえ、この日の番組内では、メインキャスターの宮司愛海アナウンサーが、「問題の根本に一体何があったのかということを、しっかりと第三者の目を入れて調べてもらう。そして会社が生まれ変わる一歩にするべきだというふうに私は感じています」「会社に対しては調査はもちろんですけれども、社員に対する説明もしっかりと真摯(しんし)に行って、真摯に公表してほしい」などと踏み込んで発言する場面もありました。
僕の長い経験の中でも、ニュースで、社員のアナウンサーが自社のスキャンダラスな事案に対して、ここまでコメントをするということは記憶になく、画期的だったと思います。
宮司アナの発言、番組として後押し
番組で問題をどう伝えるか考…