フジテレビの本社ビル=2025年1月25日午後、東京都港区、朝日新聞社ヘリから、小林正明撮影

 庁舎や企業のビルといった建築の画像がメディアをにぎわすのは完成時を除けば、たいていそこに入る組織が不祥事を起こした場合だろう。いま一日に何度も目にする、東京・お台場のフジテレビ本社のビル(1996年完成)は、まさにそうした存在だ。しかも、はしごのようなグリッド(格子)に持ち上げられた球体という特異なデザインは、強い印象を残す。設計を手がけたのは、戦後建築のチャンピオンともいうべき建築家の丹下健三(1913~2005)が率いた丹下健三・都市・建築設計研究所(現・TANGE建築都市設計)。渦中にあるこの建築をどう見ればよいのか。

 構造であると同時に装飾的要素でもあるグリッドを備えた2棟のタワーと、両者をつなぐブリッジが、全体のイメージを生み出している。このグリッドやツインタワーは、丹下の晩年の代表作である東京都庁舎(91年)の特徴を引き継いでいるともいえる。

 さらに特徴的なのは最上階に浮かぶ直径約32メートルの球体展望室。大きなボリュームを中空に持ち上げるのは、丹下が山梨文化会館(66年)で見せた手法でもある。同会館も、山梨日日新聞社・山梨放送というメディア企業の本社ビルとなっている。

 フジテレビ本社のビルを長辺…

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