ヒグマの剝製(はくせい)と村田家らを襲ったヒグマの毛皮=2024年8月6日、沼田町ふるさと資料館分館、佐々木洋輔撮影

 北海道上富良野町に住む村田孝さん(85)の自宅に2年前、見知らぬ男性が訪ねてきた。

 団子鼻で丸い頰。少し目尻が下がった柔和な表情は、父の與四郎(よしろう)に似ていた。

 村田一族は郷土史に残る事件の被害者だ。

 石狩沼田幌新事件。

 101年前の1923(大正12)年8月22日未明、北海道沼田町の幌新(ほろしん)地区で開拓民らがヒグマに襲われ、4人が死亡し、4人が重傷を負った。被害者の多さから、三毛別事件(苫前町、死者7人)、札幌丘珠事件(死者3人)とともに「三大ヒグマ事件」と呼ばれる。

 孝さんの父、與四郎さんら村田家の4人も巻き込まれた。

ヒグマ襲撃に一族4人が死傷

 沼田町史によると、その日、開墾間もない沼田町では夏祭りが開かれ、開拓民らでにぎわっていた。芝居などを楽しんだ村田家は帰路、沢付近でヒグマに襲われた。

 村田幸次郎さん(14)は撲殺されて食べられ、兄の與四郎さん(15)は重傷を負った。

 パニックになった一行は近くの民家に逃げ込むが、ヒグマは家屋にも襲来。父三太郎さん(58)が、スコップで立ち向かうが倒されて重傷。母うめさん(55)は、ヒグマにくわえられてやぶの中に連れて行かれ、食べられた。

 ヒグマは翌日以降、追跡する…

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