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山口真一さん

山口真一のメディア私評

 この夏、パリ五輪が開催された。日本でも各メディアが報じて注目された本大会であったが、残念ながら東京五輪や北京冬季五輪と同じ問題に直面した。アスリートへの誹謗(ひぼう)中傷問題である。

 柔道の選手が試合敗戦後に会場内で泣いた際には、「精神年齢がガキなのかな」といった投稿が見られた。準々決勝で敗退した男子バレーボールチームの選手にも「サーブミスとかゴミ」「素人でもクソだとわかる」といった投稿のほか、DM(ダイレクトメッセージ)でも誹謗中傷がいったという。このような問題は日本だけでなく、世界中で起こっている。

 アスリートの祭典で毎回のように誹謗中傷が問題となる背景には、いくつか理由がある。そもそもスポーツは熱心なファンが多く、熱中し過ぎるあまり行き過ぎた発言をする人が出やすい。冷静な批判ならまだしも、個人への誹謗中傷を気づかずにしてしまっているケースが多い。また、多くの人が注目したり、国同士の戦いのように映ったりすることもそれに拍車をかける。実際、筆者がNHKと行った東京五輪に関する調査では、アスリートへの攻撃的投稿の中で自分の価値観を押し付けるものが最多だった。

 加えて、テクノロジーの進歩…

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