バイデン米大統領が3日、日本製鉄によるUSスチールの買収計画の禁止を表明した。バイデン氏は「国家安全保障を損なうおそれ」を持ち出して禁止を正当化したが、禁止ありきの苦しい理由付けだ。バイデン氏とトランプ次期大統領が、そろって買収に反対する異様な状況が映し出したのは、為政者が企業活動に手を突っ込む「政治リスク」だ。
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バイデン氏は3日午前に公表した命令書のなかで、日鉄がUSスチールの買収を通じて、「米国の国家安全保障を損なうおそれのある措置を講じる可能性がある」と指摘した。これが日本企業に対する初の買収禁止命令の根拠とされた。
日鉄が米国の安全保障を損なうとすればおだやかではない。バイデン氏は具体的に何を懸念したのか。
浮上した二つの懸念
日鉄による買収の安保リスクを調べていた政府横断組織・対米外国投資委員会(CFIUS)の審査で、浮上したのは大きく二つの問題だった。
一つは、日鉄が買収後、米国…