バイデン米大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席は16日の会談で、これまで米中が積み重ねてきた対話の成果を誇った。ただトランプ新政権のもと、対話が継続するかは心もとない。新政権には対中強硬派の顔ぶれが並び、米中の緊張の高まりも懸念されている。

 バイデン氏と習氏はそれぞれが副大統領、国家副主席だった時代に会談を重ねた旧知の仲だ。バイデン氏の任期中最後となるこの日の会談に先立ち、習氏は滞在先のホテルで笑顔を見せながらバイデン氏を迎え、右手を差し出した。バイデン氏も最後の会談となることを惜しむかのように左手で習氏のひじに触れながら、笑顔で握手を交わした。会談は約1時間40分に及んだ。

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2024年11月16日、ペルーのリマで握手するバイデン米大統領(左)と中国の習近平国家主席=AP

 会談では、核兵器の使用の意思決定には人工知能(AI)ではなく「人間による制御」が必要であることを確認し、初めて声明に盛り込んだ。ロシアのプーチン大統領による核の脅しなど、核兵器の脅威が高まるなか、米国は核兵器使用の判断にAIを介在させないことを明確にするよう中国やロシアにかねて求めており、中国側が応じた形だ。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は会談後、「米中間では厳しい競争があっても、責任を持って重要な分野におけるリスクを管理するために協力できることの表れだ」と意義を強調した。

2024年11月16日、ペルーのリマで会談するバイデン大統領(左手前)と中国の習近平国家主席(右手前)=ロイター

 バイデン政権下で米中関係は一時、過去最低と評されるレベルに冷え込んだ。2022年8月にペロシ下院議長(当時)が下院議長として25年ぶりに訪台すると、中国は対抗措置として多分野にわたる両国の対話の枠組みを打ち切った。23年2月には、米国本土上空に飛来した中国の気球を米軍が撃墜し、両国の相互不信は高まった。

 ただ、緊張が偶発的な衝突につながるのを避けたい思いは双方に共通していた。高官レベルでの協議を積み重ね、各分野での対話の軌道が徐々に戻ってきた。バイデン氏はこの日の会談冒頭、米中の軍事当局間の対話の再開などを挙げ、「我々が成し遂げた進歩をとても誇りに思う」と語った。習氏も「過去4年間、中米関係は浮き沈みを経験してきた。しかし我々のかじ取りの下、実りある対話と協力に取り組んでおり、両国関係は総じて安定している」と評価した。

米カリフォルニア州ウッドサイドで2023年11月15日、ともに歩く中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領=ロイター

 だがトランプ前大統領の復権により、米中関係の今後には暗雲が漂う。

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