「トランプ外交」の予測不可能性にどう備えればいいのか。日本の政治外交史に詳しい政治学者の服部龍二さんは、米国が日本の頭越しに中国との和解へ急転換した1971年の「ニクソン・ショック」が手がかりになると指摘する。日本の対東アジア外交を考えるうえでの教訓は何か。服部さんに聞いた。
敵対から和解へ、急転換した米政府
米国が対中国政策を突然転換したことで日本に衝撃が走った事件として、1971年の「ニクソン・ショック」があります。ニクソン米大統領が、敵対関係にあった中国への電撃的訪問を発表し、対立から和解へと急転換した事件です。
当時の佐藤栄作政権にとっては、まさに驚天動地の事件でした。
今回、トランプ氏の米大統領への再就任が決まりました。「米国第一」に基づく単独行動主義が外交政策の特徴ですが、何をするか読みにくい予測可能性の低さも懸念材料の一つです。
1期目には国際的な枠組みから撤退したり、同盟関係にあった欧州との関係を悪化させたりしました。2期目は、より歯止めが利かなくなる恐れがあります。トランプ氏の再選の背景に、旧来の政治支配層への強い不信があるからです。
対北朝鮮 近しかった安倍首相も翻弄
日本が直面する東アジア情勢で言えば、予測が特に難しいのは対北朝鮮政策です。1期目には、トランプ氏と近しかった安倍晋三首相ですら翻弄(ほんろう)されました。安倍氏は北朝鮮に圧力をかけることで拉致問題を解決しようとしていたのですが、トランプ氏が金正恩(キムジョンウン)氏に急接近して対話路線に転換したため、別の方針の模索を迫られたのです。
当時の安倍氏には、「自由で…