A-stories クマと生きる 悩むアメリカの現場から
「民間のハンターが市街地に出たクマに対応するなんて、釣り人が人食いザメに立ち向かうようなものだ」
急増するクマに悩む米東海岸を取材した際、日本の現状を伝えると驚かれた。米国の各州では、野生動物管理学を学んだ専門家が州の正規職員として雇用され、長期的に野生動物の管理や保護に取り組んでいる。全米で広く普及する共通の啓発教育プログラムもある。日本と異なるアプローチを紹介し、日本が学ぶべきことはないかを探った。
世界を駆け巡る大捕物
〈プーさんだけじゃない ディズニー・ワールドに野生クマ登場〉
昨年9月、米フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドの園内に野生のクマが現れたニュースは、世界中を駆け巡った。複数のアトラクションが閉鎖され、州政府の専門家らが出動する大捕物になった。
「私が現場で指揮をとりました。ヘリコプターを飛ばして中継するメディアもいて、その対応も大変だった」
そう語るのは、フロリダ州政府の組織、魚類・野生生物保護委員会(FWC)で野生動物管理の責任者を務めるマイク・オーランドさん(51)だ。
ディズニー・ワールドは、州内でもクマが高密度で生息する地域にある。フロリダ州はクマを駆除することは禁じられていて、「本物のクマのプーさん」として話題になったクマはオーランドさんらが捕獲し、国立公園の山林に放した。「その後、ディズニー側ではクマが開けられない構造のゴミ箱を設置するなどして、より対策を強化しました」
ワニ、パンサー、コヨーテ……。フロリダ州は野生動物の宝庫だ。
「クロクマはかつてないほど増えて、現在約4千頭おり、人間とのあつれきも増えています。人々の関心が高いので、対策には気を使う」
豊かな自然で知られるフロリダ州でも、クロクマが急増中です。クマ猟が禁止されている同州では、クマが出没した場合にどのように対応しているのでしょうか。記事の後半では、フロリダ州政府のクマ対策責任者から日本へのメッセージも紹介しています。
オーランドさんが本部で指揮…