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ティラノサウルス・レックスの全身骨格レプリカ=長崎市

 「最強の王者」と言われる肉食恐竜ティラノサウルス・レックス(Tレックス)は、これまでの推定よりはるかに大きかった可能性がある――。カナダと英国の研究者が、最大サイズを推定するモデルを作り、発表した。体重は70%重く、体長は25%長いという。

  • Tレックス、最盛期に2万頭 あまり速く歩けなかった?

 論文が7月末、専門誌エコロジーアンドエボリューションに掲載された(https://doi.org/10.1002/ece3.11658)。

 史上最大の歩行生物である恐竜が、どれほど巨大だったかを知るのは、生態や進化を探る上で重要とされる。ただ、最大サイズの個体の化石をたまたま発掘する確率は非常に低い。群衆からランダムに選んだ人が、最も身長の高い人である確率が低いのと、同じだ。恐竜の種ごとの最大サイズははっきりとわかっていない。

 この疑問に、カナダ自然博物館のジョーダン・マロン博士と英クイーン・メアリー大学のデビッド・ホーン博士が挑んだ。

最大の化石より体重70%重く、体長25%長い

 恐竜の個体数の規模、成長率、寿命などを考慮した成長シミュレーションを、現代のワニの成長モデルを用いて考案。Tレックスの体格の上限を調べた。

 発見された化石標本から、Tレックスは最大で体長12メートル、重さ8.8トンと推定されている。計算によると、この大きさは種全体の上位1%に相当。Tレックスは成長すると、最大で全長15メートル、重さ15トンに達することが可能とわかった。

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現在最大とされるTレックスの全身骨格(手前)と、推定される最大サイズの骨格(奥)©Mark Witton

巨大化石、見つかることはまずない

 剣のような鋭い歯や長い尾を持ち、ラテン語で「王」の名を与えられたTレックスは、約6500万年前に絶滅するまで約240万年にわたって陸上捕食者の上位に君臨した。推定が正しければ、まだ見たことがない巨大Tレックスの化石が地下に埋まっている可能性がある。

 ただ、研究チームは「Tレックスの最大サイズの化石が見つかることはまずないだろう」とみている。

 Tレックスが地上に現れた総数は、240万年間で25億頭とも言われるが、博物館などで現在見られる成体骨格は32点余り。現在のペースで発見が続いても、最大サイズのTレックスを発見するのに1千年かかる計算だという。

■巨体支えることは可能だった…

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