写真・図版
初登庁する江東区の木村弥生区長(当時)。柿沢未途氏(右)と握手を交わした=2023年5月1日午前9時57分、同区東陽4丁目、野田枝里子撮影

取材ノートから⑥江東区事件

 「広島の片田舎ならいざしらず、東京では聞いたことがない」

 今年、2023年4月の江東区長選をめぐる公職選挙法違反事件の裁判の傍聴を続けてきた。被買収の罪に問われた区議の1人は、自身が立件されるとは思わずに、取り調べに対して19年の参院選をめぐり広島で起きた公選法違反事件を引き合いに、そう答えたという。広島の事件を知った時は「田舎の選挙だな。まだこんなことやっているんだなと思った」という区議は、「片田舎」と揶揄(やゆ)したことを法廷で謝罪したが、江東区の事件を取材してきた私も「タワマンが立ち並ぶ都会でなぜこんな事件が」と驚きの連続だった。

元衆院議員と前区長に有罪判決、現在も4人が公判中

 23年4月の区長選では今年3月、公選法違反(買収、有料ネット広告)の罪に問われた元衆院議員の柿沢未途被告が、続いて6月には、同罪に問われた前区長の木村弥生被告が有罪判決を受け、いずれも確定した。自民党だった柿沢氏は、自民推薦候補の対抗馬として出馬した木村氏を水面下で支援。その中で違法な金のやりとりなどがあったとして、秘書や被買収側の区議3人を含む9人が立件され、7人が公判請求された。現在、現職の区議3人を含む4人が公判中だ。

 2024年も残りわずか。この1年の取材で印象に残った出来事を首都圏ニュースセンターの記者が振り返ります。

人通りの多い歩道、秘書はかばんから…

 判決によると、柿沢氏は区長…

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