第97回アカデミー賞で5部門を制した「ANORA アノーラ」のショーン・ベイカー監督が来日した。ニューヨークのセックスワーカーの女性が自らの手で人生を切り開く姿を描いている。日本ではR18+に指定されるほど過激でありながら、随所で笑いを誘うユニークな作品でもある。

「ANORA アノーラ」(公開中)

 「アノーラ」が受賞したのは作品・主演女優・監督・脚本・編集の5部門。ベイカーはそのうち4度登壇した。「賞を取れると思っていたわけじゃないけど、念のため四つのスピーチを用意していました(笑)」

 監督賞のスピーチでベイカーは「今夜私たちがここにいるのは、映画が好きだからです。では、映画を好きになったのはどこでしたか。それは映画館です」と切り出し、「配給会社はまず映画館での上映に力を入れて」と訴えた。それはパソコンやスマートフォンで映画が消費されることへの危機感の表明だった。

 主演女優賞はアノーラを演じたマイキー・マディソンが受賞した。今回が初主演の新鋭だ。ベイカーは過去の作品でも無名俳優を好んで配役してきた。「私が大事にしているのは映画館の大画面で見たいのは誰か、という視点です。この人が出演すれば興行成績が上がる、といった要素は全く考慮に入れていません」

 彼女が受賞スピーチで、セックスワーカーへの謝辞を述べたことが「うれしかった」とベイカーは言う。

梶芽衣子から継承した「強さ」

 「この映画はセックスワーク…

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