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スペシャルオリンピックスとは

 知的障害のある選手が参加する「スペシャルオリンピックス(SO)」の冬季世界大会が8日にイタリア・トリノで開幕する。日本からは7競技に32選手が参加予定。SOは、オリンピック(五輪)やパラリンピックのように4年に1度ずつ開かれる夏季と冬季の世界大会を指すだけでなく、知的障害のある人が日頃からスポーツをする場をつくることも含んだ活動だ。SOの特徴や意義について、携わる人たちに聞いた。

ロンドン五輪銀メダリストとSO

 元柔道日本代表の平岡拓晃さん(40)にとって、スペシャルオリンピックス(SO)との出会いは偶然だった。

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ロンドン五輪の柔道男子60キロ級で銀メダルをつかんだ平岡拓晃さん(左)

 2012年ロンドン・オリンピック(五輪)の男子60キロ級で銀メダルをつかんだ後、中学時代の恩師に言われた。

 「メダリストになったんだから、色々なスポーツがあることを知った方が良いぞ」

 直後、SO日本法人理事長を務めていた1992年バルセロナ五輪女子マラソン銀メダリストの有森裕子さんと話す機会に恵まれた。その縁で、SOのイベントに参加するようになった。

 知的障害のある人と接した経験はほとんどなく、当初は接し方に戸惑った。そんな中、柔道のプログラムの一環で、知的障害のある子どもたちと組み合うことになった。

 力加減が分からず、技をかけるのをためらった。そうしているうちに終了の時間がきて、審判から「礼」の声がかかった。「どうすればよかったのか」と考えを巡らせていた平岡さんは少しだけ、反応が遅れた。すると、相手の子どもに「礼をしなきゃダメだよ」と注意された。

 「スポーツを通じて堂々とふるまう子どもたちの姿を見て、もっとこの活動を知りたいと思うようになった」

 柔道だけでなく、マラソンイベントに参加し、SOの日本代表合宿にも顔を出すようになった。

 競技スポーツの世界とは異なる考え方は新鮮だった。

 五輪やパラリンピックは4年に1度だが、SOには大会だけでなく、知的障害のある人にスポーツの機会を提供する日々の取り組みも含まれる。

 また、努力した過程を大切にしている点にも感心した。スポーツだから順位はつける。ただ、4位以下の選手にもリボンが贈られ、表彰台に立つことができる。

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スペシャルオリンピックスの特徴とトリノ大会について

 平岡さんは、金メダル獲得を…

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