
見る人に、夢やエネルギーを与えてくれるミュージカル。なかには、ジェンダーにまつわる問題を取り上げた作品もあります。
では、制作現場の状況はどうなっているのでしょうか。帝国劇場や日生劇場で上演される作品などに携わってきた、演出家の小林香さんに寄稿していただきました。
今も潜む「性差に基づく負の心理」
自身の経験に基づいて、演劇界のジェンダーギャップについて書いてくださいとご依頼いただきました。ハードルはあります。でも、そう、3月は国際女性デーのある月。「ウィメンズマーチ東京2025」で参加者が訴えた言葉にもこうありました。「わきまえない!」と。
私はミュージカルの演出家で、帝国劇場や日生劇場などで公演をしています。ミュージカル界に入ったのは25年前。そこは超男性社会でした。海外から権利を買うことが多く、莫大(ばくだい)な予算が組まれ、経済的リスクは巨大です。当時、それを背負って意思決定する立場(演出家やプロデューサーなど)に女性がつくことはほとんどありませんでした。
そもそも作り手側の女性は少なかった。例えば、20年前、私の先輩は優秀な演出助手でしたが、赤ちゃんを身ごもった時、契約を外されました。会社が個人攻撃したのではなく、社会が「そういうものだ」としていたと思います。私も、女性である、ということで劇場の中で理不尽で悔しい思いをしてきました。でもここに書くほどのことではないなと。なぜなら、この国の女性は生まれてこの方ずっと、日々そんな思いをしながら生きているからです。
現在のミュージカル界は変化…