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父親のシベリア抑留体験をもとに静岡市出身の女性が出版した小説が、絵本として生まれ変わった。挿絵を手がけたのは、静岡県立清水南高3年の多田つむぎさん。想像を絶する過酷な経験をつづった作品を、絵でどう表現するか。悩みながらの制作だった。
作品のタイトルは「シベリアのバイオリン」。原作は音楽家の窪田由佳子さん(70)が2020年に出版した小説だ。窪田さんの父・一郎さん(1981年に死去)がシベリア抑留中、廃材を集めてバイオリンを作り、収容所の仲間と楽団を立ち上げた物語が描かれている。
一郎さんは繰り返し「どんなことがあっても戦争はやってはだめだ」と窪田さんに語っていた。若い世代に伝えようと、友人の提案で絵本にすることが決まった。
2022年に同校で小説の朗読とピアノの公演会が開かれたのがきっかけとなり、挿絵は芸術科の生徒に描いてもらうことになった。応募した6人の生徒から多田さんが選ばれた。
「簡単には表現できなかった」
多田さんは幼いころから絵本…