30キロを数百メートルほど過ぎた地点で中標津十二楽走の応援団に手を上げて応える筆者。想定よりもかなり早く来てしまった=2017年6月25日午前8時29分、北海道湧別町

 マラソン大会で「きょうそう」と聞けば、「競走」を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、私が「競走」という感覚を保てたのは50キロほどまでだった。

 初挑戦となった2017年6月25日のサロマ湖100キロウルトラマラソンでは、50キロから先に、まったく違う「きょうそう」が待っていた。

初めて100キロという距離に挑んだ筆者は、その中盤あたりから、体も心も尋常ではない状態に陥っていきます。その時のことを包み隠さず綴りました。

 北海道湧別町の湧別総合体育館前をスタートした選手らは、まず体育館周辺の5キロを1周する。

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サロマ湖100キロウルトラマラソンのコース地図。54・5キロ地点には大規模なレストステーションが設けられている=大会公式ホームページから

 スタート前は、登山用のカッパを着ていても雨に打たれて寒さを感じていたが、その5キロを走るうちに体は温まってきた。

 5キロを1周して再びスタート地点付近に戻ってきたころには、額から汗が噴き出してきた。カッパを脱ぎ、沿道に妻を見つけると駆け寄ってそれを預けた。

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最初の5キロを走り終え、妻にカッパを預ける筆者=2017年6月25日午前5時34分、北海道湧別町

 カッパから解放されると、急に身軽になって体が動かしやすくなり、足への負荷も減った気がした。同じころ、周りの選手も体が温まったのか、一段階ペースが上がった。

「監督」のアドバイスを守れなかった私は…

 「54・5キロのレストステーションまでは1キロ6分30秒よりも速く走ってはならない」

 これは、私が勝手に「サロマの監督」と仰いでいる中標津十二楽走の先輩、遠藤和也さん(64)から最も強く言われていたアドバイスだ。

 しかし、身軽になった私は周りの選手に引っ張られて序盤から1キロ6分ほどにペースが上がってしまった。

 大事なアドバイスを守れなかったつけは後から背負うことになる。しかし、この時はそれを知るよしもなかった。

 大会を前に立てた「10キロ…

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