塚野真樹さん(54)には、忘れられない出来事がある。
30年前、神戸市。サッカー・ジャパンフットボールリーグ(旧JFL)のヴィッセル神戸に加入して1年目のことだ。
練習を終えた帰り際、仲間たちと一緒にいると近所の子どもたちが寄ってきた。何の気なしに、しばらくじゃれ合った。
すると、今度は大人たちが近づいてきた。親かな? ちょっと騒ぎすぎたかな? 身構えていたら、思いもよらない言葉をかけられた。「遊んでくれて、ありがとう」
笑顔を返しながら思った。「特別なことはしていないのに、こんなんで喜んでもらえるんだ」
練習場の近くには仮設住宅が立ち並んでいた。きっと、子どもたちが外で遊ぶ姿を親が見る機会も少なかったのだろう。あの時から――。
神戸に引っ越した翌日に
1995年1月17日午前5時46分。神戸市垂水区の3階建てアパートはドーンという大きな音に包まれた。塚野さんは1階の自室で跳ね起きた。
下から突き上げるような強烈…