2024年4月29日、サウジアラビアのリヤドで会談したブリンケン米国務長官(左)とサウジのムハンマド皇太子=ロイター
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 パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘に終わりが見せません。パレスチナ問題を「アラブの大義」としてきた中東の地域大国サウジアラビアはどのような役回りを果たそうとしているのでしょうか。中東調査会の高尾賢一郎研究主幹に聞きました。

 ――ガザでの停戦交渉が続くなか、米国とサウジが最近、両国間の安全保障協定など新たな取り決めを結ぶためにやりとりを重ねています。目的は何なのでしょうか。

 近年、米国はアジア重視の政策の方向性を打ち出すなかで、中東での軍事プレゼンスを縮小させていく流れにあります。ただ、その空白が中国やロシアに埋められる事態には一定の警戒心を抱いています。撤退するにしても、米国が今後も中東に関与するよりどころを残す狙いがあります。

 一方のサウジは中ロと良好な関係を維持するでしょう。特に、中国は石油の大口輸出先として重要です。米国を引きつけておく材料としても、中ロとの緊密さを利用すると思います。ただ、中国が軍事・安全保障面で中東に進出してくることはないでしょうし、ロシアの軍事展開もシリア限定です。そうなると、サウジが一番頼りになる米国から離れることはありません。米国と安全保障協定に向けた交渉を進めることで、中ロに完全にくら替えしたわけではない、と秋波を送っているのではないでしょうか。

最大の関心は経済成長

 関係強化の案件には、サウジ…

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