グリムスパンキーの松尾レミさん(右)と亀本寛貴さん=2024年3月31日、長野市、清水大輔撮影

 ハスキーな歌声と情感あふれるギターの音色が特徴のロックユニット「グリムスパンキー」がデビュー10周年を迎えました。

 ボーカル・ギターの松尾レミさん(32)とギターの亀本寛貴さん(34)はともに長野出身で、歌詞やメロディーをつくる際は故郷の風景から着想を得ているそうです。

 思い入れのあるその故郷で、松尾さんはデビュー前にある悔しい体験をします。でも、その出来事がプロとしての活動の原点にもなったとか。

 BUMP OF CHICKENから受けた影響やユーミンとの親交など、2人の現在地につながるエピソードの数々を話してもらいました。

 ――年明けから始まった全国ツアーは3月末に長野で最終日を終えました。この夏も東京や大阪などでライブを成功させました。

 松尾「大げさではなく、人生をかけて取り組んだツアーでした。長野公演は特に、近所や親戚の人たちに囲まれたようなアットホームさがありました」

 亀本「普段それほど音楽に能動的でなかったりする方でもライブがきっかけだとファンになりやすい。自分たちの成長につながるし、目指しているものに近づける」

 ――目指しているものとは?

 亀本「アーティストとして、シンプルにもっといろんな人に楽しんでもらいたいと思っている。昨年リリースしたアルバム『The Goldmine』は手応えがあって、その良さをライブに落とし込みたかった」

郷土の風景からわき出る曲のイメージ

 ――曲作りのためによく地元に戻るそうですね。

 松尾「地元の風景を眺めながらつくることが多い。(『The Goldmine』に収録された)『光の車輪』は霧ケ峰に行く途中にある、山小屋周辺の道をイメージしています。歌詞が生まれるのは自分の心がときめいている時です。いろんな風景や感情で心が揺れるときに言葉が出てくる」

 「(2017年にリリースされた)『美しい棘(いばら)』という曲は、中学の時に仲の良い友だちと下校時に交わしたやりとりを思い出して作りました。午後の授業が急になくなった日があって、いつもと違う帰りのルートを、片耳ずつイヤホンをして夕日を眺めながら帰りました」

 「その時、『いまは青春で毎日きらきらしているけど、大人になったら美化されて、ただの思い出になっちゃう。今私たちの中には生々しいリアルな部分があるから、それを忘れないでいよう』って話しました」

 ――中学生の時の話ですよね?

 松尾「そうなんです(笑)」

地元サッカーチームとコラボ

 ――曲の中だけでなく、実際に地域とのつながりを持ち続けていますね?

 亀本「昨年と今年の夏、サッカーJ3の松本山雅FCのホームグラウンドで、試合の前やハーフタイムなどにライブをさせてもらいました。自分自身、学生の時はサッカーをしていた。イギリスでは音楽とサッカーがコラボをする文化がありますが、それはまちを代表するアーティストでないとできないことです。音楽をやっている人間にとって、地域代表としてコラボできるのは光栄です」

 ――山雅の広報の方に伺った話ですが、ライブの際に「変化を恐れず、いろんなことに挑戦している」とおっしゃったそうですね。

 亀本「音楽は客商売。エンタメの世界は本当に入れ替わりが激しい。そこに対応して変化していける人でないと残らない」

 「才能や個性、アイデンティティーを持っているのは当たり前で、その上で、時代の波をどんどんのりこなし、常に新しい刺激を求めている人だけが、何十年も第一線で残ることができるのだと思う」

 ――BUMP OF CHICKENが好きだと伺いました。

 松尾「中2の時に友だちに教わりました。音楽のルーツをたどることの大切さを教えてくれたのがバンプです」

影響を受けたバンプにフェスで対面

 亀本「僕らが活動を始めた頃…

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