冬の人気スポーツの一つ、カーリング。ブラシで氷面を磨く「スイーピング」は、選手たちが技術の粋をこらす見せ場の一つだ。実はスイーピングは、ストーンの距離を伸ばすだけでなく、ストーンをより曲げるねらいもある。ストーンを大きく曲げたいならば、曲げる方向の逆側を磨くことが有効であると、立教大学などの研究チームが解き明かし、スポーツ科学の専門誌に発表した。学生選手たちと物理学者らがタッグを組み、実験した成果だ。
素粒子物理学を専門とする立教大の村田次郎教授(54)と、同大のカーリングサークル「SPCC」に所属していた園部日向子さん(22)=現在は社会人=、荻原詠理さん(21)ら。
村田さんは2022年、100年近く謎だったカーリングのストーンが回転の方向と同じ向きに曲がる仕組みを、精密な画像解析で解き明かし、論文発表した。今回のテーマは第2弾として、園部さんと荻原さんが提案し、スイーピングでストーンを曲げる仕組みの解明に挑んだ。「どうすれば曲げスイープが有効なのかは選手にとって疑問で、教授の力を借りればその研究ができるかも」と園部さん。
投げ出されたストーンは回転方向と同じ向きに自然と曲がるが、氷の状態などによって曲がり具合がちがう。そのため、ここ5年ほど前から、スイーピングでストーンをより曲げたり、曲げを抑えたりするようになり、「距離を伸ばす以上に重要になった」(荻原さん)。
■3パターンのどれが正解?
だが、①曲げたい側を磨く②曲げたい側の逆側を磨く③ストーンの進行方向を遮るように斜めに磨く――と、選手によってやり方は様々だった。
①ならスイーピングで氷を掘って下り坂をつくることでストーンを同じ側に導く、②なら氷を磨いてストーンの底がひっかかるのを減らして逆側に誘導する、③なら氷に傷をつけて傷の方向に沿わせる――などが仕組みとしては考えられたが、科学的な根拠は明確ではなかった。
園部さんは①の方法をとっていたが、「氷の状態によって曲がり方は違い、毎回同じ曲がりをするわけではない。スイープによる効果なのか、氷の状態によるものなのか、はっきりわからなかった」。③の方法だった荻原さんは「スイープする先のパッドで本当に氷に傷がつくのかなと思っていた」。
そこで23年、村田さんと選手たちによる実験が試みられた。ストーンを6~7メートル先をめざして一定の力で押しだし、進行方向に沿って右側だけをスイーピングした場合と、全くしなかった場合にわけて、ストーンの軌跡を計78回計測し、差があるのかを検証した。
その結果、スイーピングによ…