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約1年半、鉄栄養材を与えたオレンジの木(右)は、与えていない木に比べ大きく育ち実もたくさん付けた=2021年6月、米フロリダ州、愛知製鋼提供
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 世界的なオレンジの不作で、日本の店頭からもオレンジジュースが消えていく――。こんな状況に一石ならぬ「一鉄」を投じようと、トヨタ自動車系の特殊鋼メーカーが立ち上がる。米フロリダ州のオレンジ畑での実験結果は上々で、近く試験販売に乗り出す。

 愛知県東海市に本社を置く愛知製鋼は、スクラップを炉で溶かして鉄を作る「製鋼」から自動車部品用に金属を加工する「鍛造」まで、一貫生産している。工場では鉄くずや鉄粉も大量に発生するため、その活用方法は、長年の課題になっている。

 植物の成長に欠かせない鉄分を補給するための栄養材も、活用法を探る中で見つかった。農業や家庭園芸用の商品は2003年に国内で販売を始め、農場を持つ食品メーカーなどでも活用されていった。重金属を含まない安全な原料を選んで使っているという。

米フロリダ州での実験で成果

 かつてオレンジの一大産地として知られていた米フロリダ州では、収穫量が20年前と比べ6分の1に減った。「カンキツグリーニング(CG)病」という感染症が一因とされている。CG病に感染すると、鉄欠乏の症状になりやく、成長の妨げになるという。

 CG病は世界各地に広がって…

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