Inside Elon Musk’s Mushrooming Security Apparatus

 2023年11月、米テスラの未来感あふれる電動ピックアップトラック「サイバートラック」の市場参入を祝うイベントがテキサス州オースティンにある同社工場で開かれ、(最高経営責任者の)イーロン・マスク氏がスピーチをおこなった。イベントの前日、この工場の近くで、フロリダ州在住のポール・オーバーリームという男が「多数の死傷者を伴う事件」を企てたとして逮捕されていた。

 この事件は後に報道されたが、予定通り開催されたオースティン工場内での動きは大きな注目を集めることはなかった。

 イベントの準備段階をよく知る2人の人物への取材とニューヨーク・タイムズ(NYT)が入手した関連文書によると、警備陣はオーバーリーム氏の脅威を認識し、最大限の警戒態勢を取っていた。リストアップされた招待客全員がイベントのかなり前から調査され、慎重に選ばれていた。マスク氏が登壇した際には、36人以上のテスラの警備担当者が会場各所に配置されていた。さらにマスク氏が個人的に運営する警備会社「ファウンデーション・セキュリティー」のボディーガードたちも待機していた。

米カリフォルニア州フリーモントにある、テスラの工場=ニューヨーク・タイムズ

 53歳のマスク氏は、世界を飛び回り、有力財界人や各国首脳、著名人たちと交流し、時には人前でマリフアナを吸うなど、自由奔放なイメージ[devil-may-care persona]を長年にわたって培ってきた。しかし、マスク氏の富や名声が増し、発言もより過激になる一方で、彼個人のセキュリティー上の脅威も変化している。そのため、武装した警備担当者たちの集団[phalanx](訳注:元々は古代ギリシャの重装歩兵の密集方陣)に囲まれて身の安全を守ることが増えている。

 警察の資料やテスラの内部記録によると、2400億ドル(約34兆円)以上の総資産を誇る世界一の大富豪であるマスク氏は、かつては主に熱狂的なファンからの悪意のない電話やメッセージをさばいていたが、現在ではストーカーや殺害予告に日常的に対応しているという。多くの著名人もこうした脅威にさらされているが、マスク氏はここ数年間、高まる危険に対応するため、警護体制を改編し、すでに強固だった身辺警護をさらに強化しており、他の億万長者を上回る体制を整えている。

 テスラの内部文書によれば、マスク氏と、同氏が経営するテスラと宇宙開発企業のスペースXは、警備会社「ギャビン・ディ・ベッカー・アンド・アソシエイツ」などに対し、マスク氏の身辺警護費として年間数百万ドルを支払ってきた。内部文書や警護問題の専門家らによれば、マスク氏は自身の警備をさらに強化するために、前述のファウンデーション・セキュリティーを設立したという。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

NYTによると、イーロン・マスク氏は警護チーム内ではあるコードネームで呼ばれているそうです。経営する警備会社「ファウンデーション・セキュリティー」の社名の由来も記事に出てきます。

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 マスク氏の警護チームは現在…

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