幼い頃から数学が苦手だった私。小学校では居残り授業を何度も受けさせられ、高校でも赤点を取った。一方で、駐在しているインドの人々は、何十桁のかけ算をそらんじられるほど数学が得意らしい。古くはゼロの概念を発見したとも言われる。どうしたら数学が得意になるのか? 解答を求めて各地を歩いた。

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 試しに、2桁のかけ算「18×19」を支局の男性スタッフ(60)に暗算できるか聞いてみた。ぶつぶつとつぶやきながら、すぐに342と答えた。

 どうやって計算したのか。「暗算しやすいように、まずは19を20に変えます。18×20は360になるので、そこから18を引くと答えが出ます」

 彼の小学校では九九で終わらず、20の段のかけ算まで覚えたという。11の段のかけ算の暗算方法など、筆算以外の計算の仕方を学ぶこともある。

インド人の計算方法の事例

天才数学者をたたえる「数学の日」

 この国の数学事情を語る上で欠かせないのが、数学者シュリニバーサ・ラマヌジャン(1887~1920)だ。貧しい家庭の出身で、32年という短い生涯に、ほぼ独学で数千もの公式や定理を残し、「インドの魔術師」とたたえられた。「奇蹟がくれた数式」というタイトルで、映画化もされた。

 インド政府は彼の誕生日である12月22日を「数学の日」とし、全国各地で数学の催しが開かれる。モディ首相は「数学は私たちインド人が最も心地よくなるべき科目。世界的な数学の研究と貢献を最もしてきたのがインド人だ」と誇る。

 ラマヌジャンが生まれた南部タミルナドゥ州は、数学教育に力を入れる。公立小学校を訪れると、低学年の算数の授業が校庭で行われていた。裸足の子どもの姿もあり、決して設備が整っているとは言えない。

インド南部タミルナドゥ州の公立小学校で、数学の授業を受ける子どもたち=2024年9月、石原孝撮影

 それでも、教員は2桁の足し算や引き算といった計算だけでなく、「2桁の数字の組み合わせは他にいくつある」と、簡単には答えられない質問も投げかけていた。

「数学は人生を変える手段」 でも、苦手な子も

 数学が重視される背景には…

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