漁船を追いかける野生イルカ=2020年8月5日、石川県珠洲市三崎町寺家の沖合、出村正幸さん提供

 福井県沿岸で2022年以降、海水浴客ら50人以上にかみついたとみられるミナミハンドウイルカは、元から福井にいたわけではない。

 では、どこからやって来たのか。

 私は目撃証言を探し、イルカの経路を調べることにした。

【連載初回はこちら】50人にかみついたイルカを追うと…

福井県沿岸で50人を超える海水浴客らにかみつくなどしてけがを負わせたイルカは、どこから来たのか。目撃者の証言をたどり、共生の糸口を探ります。全7回の連載です

 過去のニュースを調べる中で、最も古い記事として、北陸中日新聞が20年8月10日に配信した「寺家港 イルカ居ついた 珠洲漁船と遊泳 住民見守る」(電子版)が目に留まった。

 寺家(じけ)港というのは、福井県の北隣にある石川県の、能登半島の先端に位置する珠洲市三崎町寺家の港のことだ。

 イルカの目撃談は数あるが、港にまで入ってきたというのは珍しい。

 しかも記事には、上あごより下あごが出たイルカの写真が添えられていた。下あごの出っ張りは、ミナミハンドウイルカによく見られる特徴だ。

 記事によると、写真を提供したのは、港近くに住む畠山由美子さん(65)。もしかすると、畠山さんが撮影したイルカは、いま福井にいる個体と同じではないか。

 イルカの個体識別は、一般に背びれの傷を照らし合わせて行う。私は畠山さんに会いに行き、背びれが写った写真を見せてもらうことにした。

漁船の周りで跳びはねたり、人と一緒に泳いだり…。記事の後半では、住民たちが見たイルカの様子を動画とともにお伝えします。

 畠山さんの家は、港の目の前…

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