金沢21世紀美術館チーム(緑)と県立工業高校チーム(黄)の試合。工業高校がつくったボールには頭文字の「K」のマークがある=2024年11月17日午後3時44分、石川県珠洲市野々江町、上田真由美撮影

 能登半島地震の被災地では、様々な復興支援イベントが催されている。著名歌手の慰問コンサート、一緒に何かをつくるアートプロジェクト……。その場に立ち会えば、参加した被災者の表情がぱっと明るくなる場面も、目にする。

 それでも、どうしても考えてしまう。

 こんなに大きな被害があったとき、アートにできることって、何だろう。

 アートとスポーツを融合させた、一風変わったミニサッカー大会があると聞き、17日、石川県珠洲市の県立飯田高校を訪れた。

 目の前で行われていたのは、見慣れない競技だった。

 いびつな形の「ボール」は、勢いよく蹴っても、思いも寄らぬ方向に飛んでいく。選手の交代は自由で、高校生も白髪頭の大人も一緒に体育館を駆け回る。

県立工業高校チーム(黄)と飯田高校チーム(紫)の試合。いびつなボールはどこに転がるかわからない=2024年11月17日午後3時46分、石川県珠洲市野々江町、上田真由美撮影

 大会は「HIBINO CUP」。アーティストで東京芸大学長でもある日比野克彦さん(66)が、アートとスポーツを一緒に楽しめるようにと各地で開いてきたワークショップだ。

 被災地・珠洲と金沢の高校生たちが交流できるようにと、金沢21世紀美術館(金沢市)が日比野さんに珠洲市での開催を持ち掛けた。

 まずは道具から自分たちでつくるのが、HIBINO CUPの特徴だ。

 飯田高校の芸術部を中心とした2チームと、金沢市の県立工業高校デザイン科、21世紀美術館のスタッフの大人たちの計4チームが、それぞれTシャツに背番号や名前を描いてユニホームをつくった。

「HIBINO CUP」で生徒たちはまず、ユニホームづくりに取り組んだ=2024年11月17日午後1時29分、石川県珠洲市野々江町、上田真由美撮影

 つづいて、ボールづくり。

 日比野さんが出したお題は、「朝顔の種のようなボール」。

 日比野さんは2003年から…

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