トランプ米次期大統領が新政権の閣僚や要職の候補を次々に指名しています。トランプ氏に忠実そうな顔ぶれで、テレビ司会者やプロレス団体の元CEOといったユニークな肩書や物議を醸している人物もいます。こうした登用は「政治任用」と呼ばれています。米国ではなぜこの方式を採用しているのでしょうか。日本でも導入可能なのでしょうか。政治任用について研究してきた小池洋次・関西学院大学フェローに聞きました。
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大変革を短期間で実行する原動力
――「政治任用」とはどんな制度でしょうか。
米国の公務員には、日本の一般的な公務員のように資格試験を受けて採用された「職業公務員」のほか、大統領が自らの権限で指名できる「政治任用者」(political appointee、presidential appointee)がいます。
主な役職でいえば大臣や大使などで、対象は4千人ほどです。日本の省庁でいうと、大臣や副大臣、政務官といった政務三役だけでなく、事務方トップの事務次官のほか、局長、審議官、参事官などといった国家公務員の幹部ポストまでも時の大統領が任命できるイメージです。閣僚など高いランクのポストは議会上院の承認が必要ですが、そうでないものも多くあります。
登用された人は、大統領の政策を忠実に実行することに力を尽くします。官僚ではなく「政治家の代理人」と捉えるべきだと思います。
――メリットは?
民間からも含め、有能な人材を幅広く集め、政策形成に取り込むことができます。大きな変革を短期間で実行しやすく、技術革新や国際情勢といった様々な環境の激変に迅速に対応できると言えます。
外部人材が政策決定に関わることで、透明性が高まる側面もあります。政治任用者が退いて企業や研究機関といった民間に戻れば、「官」での知見が民間に蓄積され、民間が政策決定についてより現実的、効果的な批判や提言ができるようになる面もあります。
――デメリットもありそうです。
政策の継続性が失われる可能…