人工授精を終えたばかりのアフリカゾウのマオ=2024年7月4日、盛岡市動物公園、佐藤善一撮影
  • 写真・図版

 国内初となるアフリカゾウの人工授精が4日、盛岡市動物公園「ZOOMO(ズーモ)」で実施された。同園で飼育するマオ(22歳)の発情に合わせて、南アフリカの野生種から採取した凍結精子を使った。3~6カ月で妊娠しているかどうかがわかるという。

 ドイツから来日したヒルデブラント博士とゴリッツ博士が中心となって作業に当たった。2人はゾウの人工授精の第一人者で、世界各地でゾウの繁殖に成功しているという。

 同園によると、マオの発情のタイミングが整ったため、4日午前8時すぎから作業を始めた。採血して鎮静剤を投入した後、特別な機器を使って2頭分の凍結精子を溶かし、マオの体に入れたという。

妊娠すれば26年春に出産へ

 日本動物園水族館協会(JAZA)によると、JAZA加盟の国内の動物園が飼育するアフリカゾウはピークの1985年には69頭いたが、昨年12月末時点で22頭になった。このうちオスは4頭で、野生動物の国際取引を規制するワシントン条約の影響で、新たに取引することも困難な状況という。

 この日は、同園のスタッフも支援に加わり、多摩動物公園(東京都日野市)など全国11園から駆けつけた飼育員らが作業を見守った。

 作業は1時間ほどで終わった。取材に応じたヒルデブラント博士は「しっかり準備を整えてくれていたので作業はスムーズに進んだ。精子の状態もよかった。マオが妊娠してくれたら、野生動物を海外から持ち込まなくてもいいので、とても意義がある」と話した。

 マオの飼育を担当する竹花秀樹さんは、2018年12月からヒルデブラント博士とやりとりを重ねてきたという。「やっと着手できた。現在、国内の動物園からアフリカゾウがどんどん姿を消している。マオの人工授精が未来につながる一歩になると思う」と話した。

 ゾウの妊娠期間は22カ月。マオが妊娠すれば、出産時期は26年春ごろになるという。

 アフリカゾウの子どもは、国内では13年のとべ動物園(愛媛県)を最後に生まれていない。盛岡市動物公園ではアフリカゾウのはなこが妊娠したが、01年に死産となり、はなこも難産で死んだ。

 同園は18年、大森山動物園(秋田市)、八木山動物公園(仙台市)と共にそれぞれの園のゾウを交換し、繁殖を促す計画を発表。東北3園アフリカゾウ繁殖プロジェクトに取り組んできた。(佐藤善一)

共有
Exit mobile version