後藤正文(C)、Cマーク、サークルC、著作権山川哲矢

 ロックバンド「アジアン・カンフー・ジェネレーション」のボーカル・ギターで、「Gotch(ゴッチ)」としてソロ活動もしてきた後藤正文さんが今年、ドローン(持続音)やアンビエント(環境音楽)に分類される音楽のアルバムを発表した。反原発活動などに共に取り組んだ故坂本龍一さんへの「近況報告」として制作したという。歌詞もメロディーもない楽曲を坂本さんに届けようと考えたわけや、音楽と言葉をめぐって考えていることを尋ねた。

「坂本さんに聴いてほしかった」

 ――本名の後藤正文名義で初めて出したアルバム「Recent Report Ⅰ」は、歌詞もメロディーもリズムもない楽曲で構成されています。配信日の3月27日は、昨年亡くなった坂本龍一さんの命日の前日ですね

 タイトルの「Recent Report」、つまり「近況報告」は誰に対してのものか。自分の中では非常に明確です。坂本さんに聴いてほしかったんです。

 ――どのような交流がありましたか

 東日本大震災以降、(坂本さんが呼びかけた脱原発を掲げる音楽イベントの)「NO NUKES」に参加させていただきました。ただ、そうした社会活動の中では親しく色々な話をさせていただきましたが、音楽についてとなると、自分の準備が全然足りないと思っていました。ポップミュージックを長らくやってきた身からすると、坂本さんの作品に挑む姿勢や作品そのものの美しさに対するリスペクトの気持ちがとても大きかったので。

 その後、「NO NUKES」を引き継ぐ形で「D2021」(ドキュメンタリー映像やイベントなどを通じて社会問題に広く向き合う活動)が2021年に始まりました。その頃から、月に数回ほど、Zoomなどでやり取りをするようになっていました。

 ――後藤さんの作品を、実際に坂本さんに聴いてもらう機会もありましたか

 17年に小説「YOROZU~妄想の民俗史~」を書いたときに、その読書用CDとして初めてアンビエント作品をリリースしました。それを坂本さんがどこかで聴いてくださったようでした。坂本さんは自分のラジオ番組でもこのCDをかけ、「こういう音楽なら一緒にできそうだね」という話をしてくださいました。

 特に(歌のない)インストゥルメンタル作品に関しては、坂本さんの影響を基本的にずっと受けています。

 ――いつごろから坂本さんの作品を熱心に聴くようになりましたか?

 年齢差もあるので、リアルタイムで聴くようになったのは遅いです。「out of noise」(09年)あたりで、ようやくすごい人だと認識した、耳の遅いミュージシャンでした。フィールドレコーディングを採り入れ、音楽と思想の境目がどんどん無くなっていくような坂本さんの歩みにひかれていきました。

 音楽以外にも色々なことを考えて行動されている坂本さんのアウトプットは複雑で、どうしてこういう作品なのかということも含めて考えさせられる。音楽と哲学が一緒になっていると感じます。

永遠に引き延ばしたい、あの曲のイントロ

 ――今回の後藤さんの作品には、歌詞やメロディーがありません

 歌詞があるポップミュージッ…

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