札幌市豊平区にある総合病院「KKR札幌医療センター」の敷地内薬局の公募をめぐり、公契約関係競売入札妨害罪に問われた「アイン薬局」を展開する調剤薬局最大手「アインファーマシーズ」(同市白石区)元社長ら2被告の控訴審判決が28日、札幌高裁であった。青沼潔裁判長は一審・札幌地裁の有罪判決を破棄し、被告2人に無罪を言い渡した。
被告は酒井雅人・同社元社長(55)と新山典義・同社元北海道支店長(56)。起訴状によると、両被告は2020年12月の公募締め切り後、土地賃料を他社よりも高額に差し替えて企画提案書を再提出し、「公の入札」の公正を害したとされる。
一審は両被告にいずれも懲役6カ月執行猶予2年を宣告したが、弁護側が「公募は随意契約の一種だった」と主張し控訴。高裁は一審判決を覆し、そもそも今回の公募は「入札」にあたらず、罪が成立しないと判断した。
高裁判決によると、今回の公募では、応募の優劣を判定する基準が明確に定められておらず、応募者が基準を理解できる状況ではなかった。そのため、「競争入札の実質があったと認めるには疑いが残る」とした。
ただ、病院の元事務部長の男(64)=同罪での有罪判決が確定=が企画提案書の再提出を持ちかけ、アイン側が応じたことについては、明らかに公募手続きの「公平を害すべき行為」だったと指摘した。
札幌高検は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。
判決骨子
・「競争入札」は、何によって優劣が判定されるか、事前に明らかにされる必要がある
・公募は企画提案型で行われた。提案すべき8項目は示されていたが、配点やその基準は事前に公表されていなかった
・今回の企画競争は、何によって優劣が判定されるか明確な基準が定められていない。また落札者が基準を理解できる状態にあったとはいいがたい
・病院側も、項目ごとの配点は決めていたが点数の基準はなく、審査員の判断に委ねていた。審査員ですら、優劣の判定基準を共有していたとはいいがたい
・外からは応募者間で競争しているように見えても、内容面で「競争入札」の実質があるというには疑いが残る
・優先的に交渉する業者を決めるための公募で、契約を締結するためのものとはいえない
・「公契約関係競売入札妨害罪」の対象とはいえず、罪は成立しない