別府温泉郷がある大分県別府市。個性豊かな8湯からなる温泉地だ。入浴剤「湯の花」の産地として知られる明礬(みょうばん)温泉を訪ねた。

 別府駅から路線バスで30分余り。街を見下ろす山の中腹。山を背に湯煙が何本も立ち、硫黄臭が波のように鼻をつく。道沿いの斜面にはわらぶきの小屋が15棟。小さな煙突から湯煙をあげるものなど、ふぞろいに立っていた。

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夜明け前、星空の下に浮かび上がる「わらぶき小屋」=大分県別府市、日吉健吾撮影

撮影ワンポイント

月の優しい光で「わらぶき小屋」を引き立たせるため、夜を選んだ。初日は月が雲で隠れていたので、翌日の夜明け前に再撮影。LEDライトを照射してピントを合わせ、40秒ほど露光した。小屋の手前を見せるためにストロボを軽く発光させた。暗い時間帯は足元に気をつけ、立ち入り禁止の場所に入らないようご注意を。

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 「江戸期に『ここは噴気が出る』と定めた位置に立ったようです」。そう案内してくれたのは、「みょうばん湯の里」社長の飯倉里美さん(65)。ここの湯の花を原料に、江戸期は止血剤に使われたミョウバンを製造していたという。「中国からの輸入品だったミョウバンの国産化に成功したのが初代。私で16代目です」。江戸享保年間に創業し、今年で300年目。

 一般的な湯の花は、温泉の沈殿物がもとになる。「大地からあがる噴気をもとに作るのは、世界でもここだけと言われる製法です」と飯倉さん。

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明礬温泉の「みょうばん湯の里」=大分県別府市、日吉健吾撮影

 職人の山口裕之さん(52)…

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