記者コラム 「多事奏論」 文化部(大阪)記者 河合真美江
88歳の母が一人暮らしをしていて、毎日のように電話する。このごろ、こう始まる。「今日の見た?」。NHKの連続テレビ小説「虎に翼」だ。
「家庭裁判所ってああやってできたんだね」。母がこんなに夢中になってドラマについて語るのを見たことがない。女性として日本で初の弁護士になり、裁判官になった三淵嘉子さんをモデルにした昭和初期から戦後の物語。法の下の平等や人権について真っすぐ問いかける。
私の母は終戦時に9歳。「ひもじくてね」。兄が2人いて、かわいがられて育った。でも、「女が大学に行く必要はない」と父親の一言で洋裁学校へ。「どんな男尊女卑の時代を生きていたのか、今知ってよかった。悔しいけどね」
ドラマに気持ちがかきたてられ、語りたくなっている人が世代を超えてまわりに多くいる。「女性の人権のため闘ってくれた先輩ありがとう」という思いと、なお残る性差別への怒りがあるから。
日本語の中の性差別を研究し、「女のことばの文化史」(学陽書房)を著した文教大元教授の遠藤織枝さんは、ドラマの人物が話す言葉に耳をすませている。なかでも、主人公の猪爪(いのつめ)寅子(ともこ)とともに学び、弁護士を目指す山田よね。よねさんは断髪にパンツスーツで、いつも怒りをたたえた顔をしている。そしていわゆる女言葉を使わず、率直な物言いをする。
「よねさんは『意味はない』『行く』などとよく言い切っている。強い意志の表れです。おもに男性が使うとされる『おまえ』や、『やめろ』『いいかげんにしとけ』のような男性専用とされる命令形も多いですね」と遠藤さん。
「女らしい」言葉にしばられ…