「祝い唄と踊り唄による幻想曲」で第34回朝日作曲賞を受賞した杉山義隆さん=2025年2月8日午後1時9分、仙台市泉区、魚住ゆかり撮影

 静かな笛の音と厳かな鈴の音が、あたりを清めるように響くと、のびやかな「祝い唄」が始まる。2025年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅰ「祝い唄と踊り唄による幻想曲」は、宮城県の民謡「さんさ時雨」で始まる。

 作曲したのは、宮城県の公立小学校で校長をつとめる杉山義隆さん(59)。一般公募作品の中から最優秀の第34回朝日作曲賞に選ばれた曲に込めた思いなどを聞いた。

  • 自分の楽器を好きになって 吹奏楽コン課題曲Ⅲを作った大学生の意図

「還暦祝いに、課題曲、書いたら?」

 ――作曲のきっかけがあったそうですね。

 去年の新年会の時、古い吹奏楽仲間が「還暦祝いに、課題曲、書いたら」って、ぽそっと言ったんです。

 宮城教育大の小学校教員養成課程で、音楽コースに在籍し、和声法、対位法、楽式論などの音楽理論やマリンバを学びましたが、作曲はほぼ独学です。37年間の教員生活の中で、打楽器アンサンブルのオリジナル曲を作ったり、教え子たちが学校の演奏会や吹奏楽コンクールで演奏する作品の編曲をしたりしてきました。

 二足のわらじなので、大きい編成のための曲は3年に1曲書けるかどうか。全日本吹奏楽コンクールの課題曲も、マーチを書いて、5年に1回くらいの割合で応募していました。

 校長になって本業がさらに忙しくなり、久しぶりに課題曲に挑んだものの、作曲はなかなか進みません。今回もマーチを書き始めましたが、4小節で挫折しました。

 ――そして、マーチとはまったく別の曲が課題曲に選ばれました。

 締め切りが迫り、これはもう…

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